神光学 Nikon AF Micro-Nikkor 55mm f/2.8
ニッコール千夜一夜物語、第二十六夜で紹介された、Ai Micro Nikkor 55mm F2.8。実はこのレンズ、幻の?AFタイプが存在します。
描写のボケ味などの質感はさておき、ど真ん中の所謂標準域で、最高の解像度(シャープ感)を求めようとすると、安直に大三元の24-70や50mm単焦点等を想像される方が多いかもしれませんが、この点においては、Nikonの真骨頂、マイクロレンズが完全に圧勝です。
千夜一夜物語によると、日本の文化「漢字」と深く結びついた、必然的に開発されてきた精度のようです。確かに複写において、ローマ字よりも漢字を正しく描写する方が遙かに難しいですよね。
さらにこのマイクロ(マクロ)レンズというもの。広く一般的には、接写用、クローズアップ専用、というイメージが強いようです。確かに基本性能はそれに特化していますが、『遠景でも使える』んです。それこそ 50mm 1.8や1.4と比べてみて下さい。ボケはともかく、画面中央から四隅に至るまでの解像度の高さは、マイクロレンズの右に出る玉は無いのでは?
マイクロレンズのAF及びフルフレーム対応の現行製品では60mmが最も標準に近い焦点距離なので、この事を知っている方は60mmを標準レンズとして使用している方も多いようです。マクロ領域での撮影の場合は通常、ワーキングディスタンスの確保できる105mm以上〜200mmの方が良いとされています。
さて、ではこの60mm f/2.8 Microですが、現行最新は AF-S Micro Nikkor 60mm f/2.8G ですね。AF速度が暴速として知られているレンズです。確かに類を見ないほど、瞬間的で気持ち良いです。しかし歪曲収差、さらにワーキングディスタンスにおいて実は、同じ現行品ですが絞り環付きの、Ai AF Micro Nikkor 60mm f/2.8Dの方が優れている、という評判が定評です。
私も60mm 2.8Dは何本か持っていたもので、実はこのAF 55mmと比較してみました。
結果、近差ではありますが、明らかにAF 55mmの方がシャープでした。分かりやすかったのは開放f/2.8での描写で、焦点が合った部分でもAF-Dタイプではまだ球面収差が残っており、明暗差の激しいモチーフだと色付いてしまいます。しかし55mm。こちらは開放ですら、F8で撮ったかのような解像感で収差もほぼゼロ。
マクロ作業とストロボ撮影では60mmのDタイプの方が扱い易いのは明白ですが、光学設計においては55mmの方が優れているようです。
距離情報を備えたDタイプやGタイプは測光に優れていますが、それはストロボの設定で補えるものです。ワーキングディスタンスがDより若干近いのは否めませんが、マクロ撮影はあまりしません。となると、光学設計は工夫してどうこう出来るものではないので、私は最終的に55mmを選びました。マニュアルを好む方の場合はAi-sの方が操作感も断然良いと思いますが、マクロ時以外はほぼAFの私にはぴったりです。気に入ってもう随分長く使っていますが絶好調です。開放では周辺光量落ちがやや目立ちますが、色のりも60mmよりも良く、空間表現が独特なので気に入っています。但し、暗所でのポートレート等はやはり50mm1.4Gも使っていますが。
因みに、海外で有名な写真家兼評論家の Ken Rockwell のサイトでは、この55mmは、f5.6の中心で解析限界(1mmあたり300本の解像度)が認められた、という逸話もしれっと掲載されていました。
1956-1979年のロングランの銘玉 55mm f / 3.5 Micro から、1979年、Ai 55mm f/2.8へと進化した最高の光学設計のマイクロレンズと同様の光学を備えた AF Micro Nikkor 55mm f/2.8(1986-1989年)。
1993年のAF-Dや2008年のAF-S Gよりも僅かながら優れているというのは本当に驚きました。しかもこの中で1番軽いし安い!
この感動は、家族に話しても共有できないのでせめてオンラインで記事にしてみました。。
皆さまの趣味の時間に、少しでもご参考頂ければ嬉しいです。
0コメント